合宿免許 鳥取の対策
なぜ日本人の生活がそう変わったかというと、要するに日本の産業がどんどん工業化していき、その工業化も大量生産に次ぐ大量生産で、ダイヤとレールがあらゆる人間をきびしく管理するようになったからです。
そういう機械の動作に我われの行動を自然に合わせようとするのです。
こういう社会はいわゆる「管理社会」と言われます。
しかしやはり人間は生物ですから、何もかも機械のように決められると生理的にも心理的にも息がつまってしまうのです。
どこかで動物的な雰囲気や人間的な感情や習慣を回復したいと願う。
とすると、マイカーこそそれにうってつけの手段となったのでしょう。
ダイヤとレールから解放されて、いつでもどこへでも行ける手段がそこにある。
そしてそのマイカーの中で、私はそこの王様で、社会的地位にかかわりなく、仕事の幅にかかわりなく、私はそこで自由だということになります。
私は、車の魅力というものは、結局は管理社会からくるのだろうと思います。
つまり、『モダンータイムス』でチャップリンは自分で自動車の部品をつくりつつ、その大しかけな機械にしばられていく。
そのゆえにこそ彼は自動車に乗らざるを得ないことになると私は思います。
自動車に乗ってみると、先ほど言ったように交通マヒが起こってどうにもならなくなるとか、自動車事故が起こるとか、環境が破壊されるとか、資源が枯渇するとか、いろいろな問題が起こりますが、それにもかかわらず乗らざるを得ないという情況がそこにある。
その意味では、マイカーとはマイホームと同じなのです。
マイホームへの憧れがマイカーへの憧れに移っていると言ってもいいでしょう。
ただ、くりかえしますが、マイホームと違って、マイカーは動くところに密室以上の魅力がある。
だから、少なくとも一軒に一台は欲しくなるのです。
自動車は大量浪費の王様である前章でお話ししたように、自動車は公共交通機関をどんどん駆逐していきますから、ついに一軒に一台では足りなくなって、二台になり、三台になるということになる。
現に私の家でも二台あります。
妻と二人暮らしですけれども、二人で二台。
つまり、私か私の車に乗って大学に来てしまうと、彼女は買物に行きにくくなり、友人の家にも行きにくくなるから、彼女は彼女で車を使っている。
私も半分は妙な気分がしているのですが、なおかつそれは非常に便利なのです。
気分もよろしい。
ああ、ああと思いながら、いわば時代に流されながら乗っているという感じでいます。
おそらく、多くの自動車に乗る人が何となく、どうしてこんなに交通マヒが起こっているのに私は車に乗っているのかなどと、思っていることでしょう。
ずいぶんむだだと思います。
タクシーなら二四時間動いているのにマイカーはほんの少しの時間しか動いていない。
私の車は大学に来てじっと私を待っている。
家から大学まで片道三〇分そこそこしかかかりませんから、結局一日に一時間しか動いていない。
タクシーにくらべると二四倍むだになっている。
私の車は五人乗れます。
それを一人で走っているのですから、それでさらに五倍むだになっている。
あわせて二一○倍むだになる。
それが私だけではなく、なおかつモデルチェンジなどで使い捨てられていくというのだから、自動車は浪費の王様のようなものなのです。
だが、それにもかかわらず我われの気分がいい、快適だ、便利だということで、流され流されてきている。
こういうことがいつまでも続くとは考えられません。
少なくとも人類としては長続きしないだろうと私は思います。
私自身も、歴史の波に流されていくという運命を感じているのです。
自動車に乗らざるを得ない都市しかし、先ほども大量生産、大量浪費というところで言ったように、こんなことが世界的に広がると、人類の前に間違いなく不吉な運命が待ち構えているだろうと思ってもおかしくはありません。
だから、これは何とかしなければならない。
まず第一に我われがなぜ車に乗らなければならないかということですが、いままでの話のように自動車に大きな魅力があることは明らかです。
私自身も研究室から家に帰る頃には、もう神経が疲れきっていますが、私のプライベートな空間の中でカーラジオをききながらリラックスして帰れる。
これは仕事の圧力からの息抜きのようなものです。
しかし、そのためにだけ自動車に乗っているかというと、そうでもない。
私の家から大学に通うのに、ふつうのようにバス、電車、バスと乗り継げば、もちろん通えます。
しかしそれは、少なくとも一時間以上かかる。
車なら三〇分。
乗りかえのわずらわしさもないし、バスや電車を待つイライラもない。
ほんとうをいえば、歩いて職場に来られるならば何も自動車を使うことはないのです。
私は旧制高校時代は松本で過ごしました。
当時人口は七万ぐらいです。
人口七万で私の下宿は町の東北のすみにあって、ある映画館は西南のすみにある。
つまり対角線を移動するからいちばん距離の長いところですが、それでも二〇分もあれば歩いて着いてしまう。
自転車の必要さえなかった。
逆にいえば、都市がある程度大きくなると、自動車がないと用が足せなくなるのです。
前にお話ししたように、都市がスプロール化してドーナツ状に発達していく。
車があるからドーナツ状に発達し、ドーナツ状に発達するから車がいるという悪循環かおりますが、その悪循環を断ち切ることが一つの問題なのです。
車を通勤に使うのは元来ばかげたことなのです。
なぜかというと、車はダイヤとレールから解放されていて、いつでもどこへでも行かれるものですから、通勤のように、決まった路線を同じ時刻で動くという目的にはふさわしくない。
それは鉄道や公共バスがおやりになればよろしい。
マイカーがやる必要はないのです。
その自動車の本来の特性を殺して通勤に使うというのは、技術的には合理的ではありません。
自動車は共同で使うべきものであるもしも都市が合理的につくられていて、多くの人が自分の家から職場まで歩いて行けるか、ないしはせいぜい自転車で行けば十分であれば、自動車はダイヤとレールから解放されている本来の特性を生かして使うべきものでしょう。
つまり臨時に自動車がいる場合にこそ使うべきものでしょう。
その最たるものは消防車や救急車です。
あれがもし鉄道ですと、まだ発車時刻になりませんから火事を消すのに間にあいませんね、とか、バスが遅れておりますので救急車は来ませんよということになってしまう。
そういう場合はダイヤと路線に無関係な自動車がいい。
そのほか、さまざまな日常的な用で急に必要になった時には、車は大いに有用なのです。
それからレジャーなどには非常にいい。
レジャーなども、やたらに管理されていると、これまた息がつまってしまいますが、時間も場所も自由に移動できるレジャーがいい。
そうすれば、一日に使う時間は、ごくわずかに違いない。
とすれば、これはお互いに共同で利用したらいいじゃないかということになる。
自動車は共同利用することが、おそらく本筋なのでしょう。
自動車のように大きな機械で、自動車のようにマイプライベートな空間というものは、本来十分に文明が発達した社会にはなじまない。
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